「幸せになれる」予言と約束
精神科医の宮地尚子先生が書かれたエッセイ集「傷を愛せるか」(ちくま文庫)を読んでいて、とても印象深い文章がありました。以下、その抜粋(一部要約)です。
~さまざまなトラウマを負った人と臨床現場で接する数がふえるうちに、わたしは「あなたはいつかきっと幸せになれると思うよ」「あなたが幸せになっていくのを、わたしは見守っているよ」といった言葉を、あえて口にすることがふえてきた。
(中略)
もちろんわたしには将来を見通すことなどできない。彼女がほんとうに幸せになれるかどうかはわからない。
(中略)
それでも、「あなたはいつかきっと幸せになれる」といった予言の言葉、「あなたが幸せになっていくのを、わたしは見守っている」といった約束の言葉が、トラウマを負った人にとっての命綱になることがあると思うのだ。~
宮地先生は続けて、こうした命綱を投げて助けようとする人はいるのだということを「思い出してもらう」ことが大事だと書いています。
何らかの危機的状況にいる方のなかには、その問題に圧倒されて解決の見通しも持てず、どうしてよいかわからず、立ちすくんでいる方が少なくありません。こうした方にとっては、それでも希望はあるのだと気づかせてくれる他者の存在が必要です。 私もこれまでのクライエントとの対話のなかで、このような「予言」や「約束」の言葉をたびたび使ってきました。それが決して無責任な励ましや気休めではなく、クライエントにとってのあらたな気づきになっているよう、これからも努めていきたいと思います。

