【カウンセリングの方法論について⑤~短期療法について】

短期療法(ブリーフセラピー;Brief Therapy)とは、特定の心理療法やカウンセリングの技法を指す言葉というよりも、クライエントの時間的・経済的負担を軽くするために、できるだけ短い期間で行う進め方や枠組みの特徴から総称されるものと考えられています(有斐閣現代心理学辞典を参考にしました)。

アメリカの心理療法家のミルトン・エリクソンの実践をそのルーツとして語られることが多く、代表的なモデルとしては、MRIアプローチや解決志向アプローチ(Solution Focused Approach)などが挙げられます。私はとくに解決志向アプローチに関心を持ち、いくつかの勉強会等で10年以上学んできて、その有用性を実際の臨床場面で経験してきました。クライエントの悩みや問題について、その原因に焦点を当てるよりも具体的な解決のヒントを探り(未来志向)、実践していくやり方ですが、とくに自己評価が低い方、家族関係で悩んでいる方、依存症の問題のある方(本人及びご家族)、うつ病等の精神疾患の回復期でリハビリテーションを行っている方などで、効果を実感しています。

一方、犯罪被害等で傷ついた方や、犯罪被害や自死、ご病気等で大切なご家族を亡くされたご遺族等のご相談においては、未来に目を向けることは簡単なことではなく、起こった出来事、その時の感情などを共有しつつ、少しずつ前を向いていけるようお手伝いをしていくことが大切です。私は、おもにJ.W.ウォーデンの「悲嘆カウンセリング」のやり方をベースに行っていますが、その過程の中で、少しずつでも前を向いていけるよう、短期療法のエッセンスを取り入れることはあります。

これまで、カウンセリング、心理療法の技法について何回かに分けてご紹介してきましたが、実際にはクライエントの悩みや問題、それぞれの対処の仕方や個性に応じて、特定の技法にこだわることなく、その時々でもっとも適切かつ有効な進め方を考え、選択してきましたし、今後もそのように取り組んでいきたいと思っています。

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